栃木県宇都宮土木事務所、宇都宮市建設部河川課、宇都宮市経済部農業企画課インタビュー

安全な市民生活を支える流域治水「宇都宮市総合治水・雨水対策推進計画」/宇都宮市役所・栃木県(栃木県)


甚大な被害をもたらした令和元年東日本台風(台風第19号)を機に、策定されることとなった「宇都宮市総合治水・雨水対策推進計画」は、「流域治水」という考えに基づいているという。さまざまな関係者による治水対策である「流域治水」をはじめ、当計画の中期目標、長期目標、そして具体的な取り組みについてお聞きしてきた。

インタビューに応じてくださった栃木県庁と宇都宮市役所の皆さん
インタビューに応じてくださった栃木県庁と宇都宮市役所の皆さん

令和元年東日本台風の経験を元に策定された治水対策

――2021(令和3)年5月に宇都宮市が策定した「宇都宮市総合治水・雨水対策推進計画」について、当計画を実施することになった背景と目的を聞かせてください。

北島さん 令和元年東日本台風により、中心市街地を流れる田川や観光地である大谷地区で甚大な被害が発生しました。この被災を受け、「流域治水」(流域に関わるあらゆる関係者が協働して水災害対策を行うという考え方)に基づき策定したものが「宇都宮市総合治水・雨水対策推進計画」です。

計画の柱は「流す」「貯める」「備える」
計画の柱は「流す」「貯める」「備える」

本計画の具体的な取り組みとして「流す」「貯める」「備える」という3つの柱があり、まず「流す」については河川・下水道雨水幹線の整備、「貯める」は田んぼダムや雨水貯留・浸透施設の整備、そして「備える」は、ハザードマップを活用した事前周知や、河川監視カメラの設置による監視体制の強化などがあります。

本計画が設定している目標には長期と中期があり、30年後の2050(令和32)年度までに既往最大の短時間降雨である1時間あたり83ミリの降雨に対し、市民生活に大きな影響を及ぼすレベルの床上浸水が起きないとする長期目標を掲げ,その目標を展望しながら,中期目標として,現在の河川整備の計画降雨であります1時間当たり47.2ミリの降雨に対し、10年後の2030(令和12)年度までに市域全域での床上浸水の解消を目指しています。

田川流域の約6.5キロメートルの区間で、県の「浸水対策重点地域緊急事業」が進められている(資料提供:栃木県)
田川流域の約6.5キロメートルの区間で、県の「浸水対策重点地域緊急事業」が進められている(資料提供:栃木県)

「流す」「貯める」「備える」の3本柱で支える治水計画

――「宇都宮市総合治水・雨水対策推進計画」には「流す」「貯める」「備える」の3本の柱があるとのことですが、その具体的な取り組みについて聞かせていただけますか?

宇都宮市中心市街地部の河川水位を低減する「岩曽調節池」工事前の山田川・田川周辺の様子 (撮影:栃木県)
宇都宮市中心市街地部の河川水位を低減する「岩曽調節池」工事前の山田川・田川周辺の様子 (撮影:栃木県)

北島さん 本計画を策定する上で、浸水区域に関するシミュレーションを何度もしました。そのなかで見えてきたのは、雨の特性により浸水エリアが変わるということでした。田川のように広い流域の河川は、台風などの長時間降雨で被害が発生しやすく、流域が狭い普通河川や準用河川などの市管理河川はゲリラ豪雨などの短時間降雨で被害が発生しやすいいうことがわかったのです。

2025(令和7)年の完成を目指して工事の進む「岩曽調整池」。山田川の河道の付け替えも行われる(撮影:栃木県)
2025(令和7)年の完成を目指して工事の進む「岩曽調整池」。山田川の河道の付け替えも行われる(撮影:栃木県)

上空から見た「岩曽調節池」。調節池の面積は約18ヘクタールにも及ぶ(資料提供:栃木県)
上空から見た「岩曽調節池」。調節池の面積は約18ヘクタールにも及ぶ(資料提供:栃木県)

現在、県主導による河川改修事業として、河川の水位が高くなったら自動で流れ込むようにする「岩曽調節池」や「川田調節池」の整備を進めているほか、流せる能力を高めるため、河道の断面を広げる工事を進めています。さらに同時並行で、田んぼのもともとの貯水機能を利用した田んぼダムの普及促進、公共施設や市街化区域における雨水貯留・浸透施設の設置、さらに道路の透水性舗装といった「貯める」取り組みについても進めています。 

多くの人に知ってほしい安心と安全への取り組み

――「備える」にも関連しますが、市民に対する防災対策の周知活動などありましたらお聞かせください。

北島さん 河川改修整備中で溢れやすいところについては監視カメラと水位計を設置し、2023(令和5)年6月から河川カメラの運用が始まりました。従来は、市民の通報を受けてから土嚢を積みにいったり、二次災害を防ぐために交通規制をかけたりしていましたが、リアルタイムで河川の状況を確認できるようになったことで、市民の方だけでなく、迅速な対策を取れるという意味で我々にとっても大きな助けとなっています。

目黒さん このような取り組みは、市の広報誌や集客力の高い商業施設などでオープンハウス型説明会を開催して紹介しています。ほかには出前講座として、防災知識の醸成を行っています。

より安全な市民生活を目指す動きを知ってほしいと語る皆さん
より安全な市民生活を目指す動きを知ってほしいと語る皆さん

伊藤さん 県は、2023(令和5)年10月12日に「岩曽及び川田調節池整備工事」の着工式を行いました。工事に対する理解とともに、より安全な市民生活に向けた動きがあることを知っていただければと思います。

また、宇都宮市から市街化区域における雨水貯留・浸透施設の補助については、2019(令和元)年の申込件数は81件でしたが、補助対象施設を一般住宅に加え、集合住宅や事務所、駐車場などに拡充したことで、翌年は264件になったと伺っています。県や市によるこれまでの周知活動が、より多くの市民の方に「水害に備える」ことに対して興味を持っていただけた結果だと思っています。

――「宇都宮市総合治水・雨水対策推進計画」が進んでいることで、栄町エリアもよりよくなりますね。

伊藤さん そうですね。「流す」「貯める」「備える」の「備える」取り組みが自然と根付き、水害に対する防災意識がより広まってくれたらと思っています。

「宇都宮市役所」
「宇都宮市役所」

宇都宮市役所・栃木県

栃木県宇都宮土木事務所 企画調査部 企画調査課
  技師 谷賢太郎さん
栃木県宇都宮土木事務所 整備部 整備第二課
  主査 伊藤壮大さん
宇都宮市建設部河川課
  課長補佐 北島瑞夫さん
宇都宮市建設部河川課 総合治水企画グループ
  係長 目黒正和さん
宇都宮市経済部農業企画課 農業環境活性化グループ
  係長 小林弘明さん
宇都宮市経済部農業企画課 農業環境活性化グループ
  主任主事 髙瀬基樹さん
所在地:栃木県宇都宮市旭1-1-5(宇都宮市役所)
電話番号:028-632-2222(市政情報コールセンター)
URL:https://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/
※この情報は2024(令和6)年4月時点のものです。

安全な市民生活を支える流域治水「宇都宮市総合治水・雨水対策推進計画」/宇都宮市役所・栃木県(栃木県)
所在地:栃木県宇都宮市旭1-1-5 
電話番号:028-632-2222(市政情報コールセンター)
開庁時間:8:30~17:15(月曜日は一部業務を19:00まで延長)
休庁日:土・日曜日、祝日、年末年始
https://www.city.utsunomiya.lg.jp/